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2019.6.4

お寺の客殿・庫裡新築マスタープラン。確認申請は増築?新築?(大江)

2019.6.4

Category: 客殿・庫裡新築

静岡市のお寺から、客殿・庫裡のマスタープランを依頼されました。
客殿とは参拝者を接待する所、庫裡は住職ご家族のお住いです。

お寺からマスタープランの依頼を受けると、住職ご家族と打ち合わせを重ねながら、間取りと外観を考えますが・・・・
当然、建築基準法を始めとする法律に対する合法性も検討していきます。

 

境内には、鉄筋コンクリート造の本堂が建っています。

新築する客殿・庫裡と本堂は接続されている方が便利なので、本堂の増築として建築確認申請できないか?検討しました。


△屋根付きの廊下で接続する場合は、本堂の増築とみなされます
 

増築で申請する際、問題になるのは・・・

①本堂を新築した時、当時の建築基準法に対して合法だったかどうか!

②本堂が新耐震基準(現在の建築基準法に基づき構造計算された構造)を満たしているかどうか!

 

①については

・建築確認申請審査済証
(工事の前に、設計内容が法律に適合していることを審査機関に確認してもらった証)と

・検査済証
(工事の後に審査機関の検査を受け、建築確認申請通りに造られていることが認められた証)

がお客様の手元に残っていると、とてもスムーズです。

もし、紛失された場合は、国が定めるガイドラインに基づく現況調査が必要です。
大変な費用を要しますので、大切に保管していただきたいのですが・・・
困ったことに、紛失されるお客様が多いのも事実です。


②については

本堂の新築が昭和56年より後であり、建築確認申請審査済証・検査済証が残されていれば、問題はありません。

 

しかし・・・
本堂の建築確認申請審査済証・検査済証はお寺に残されていたものの、建築された年が昭和40年でした。

そのため、客殿・庫裡を本堂の増築として確認申請するためには、本堂の耐震補強工事が必要なことがわかりました。

もちろん、本堂が新耐震基準の耐震強度を持っているに越したことはありませんが・・・
特に、鉄筋コンクリート造の耐震補強は、新築同等の工事費を要することが一般的です。

「今回は、とてもそんな工事費を用意できません」
住職の決断で、本堂の増築ではなく、別棟の新築で建築確認申請を提出する方針に決まりました。

建物を別棟にする方法は、行政によって基準が異なります。
設計を進める前に事前相談を行い、お客様が便利にお使いいただけるように、間取りや配置を考えます。

 

お寺や歴史のあるお宅では、敷地内に既設建物がある場合がほとんどです。

増築にするにしても新築にするにしても、法律上の既設建物の取り扱いに注意して、マスタープランを進める必要があります。


 

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