お客様の声 〈ご住職に聞く〉お客様の声 〈ご住職に聞く〉

次の世代に引き継いでいく伽藍を造ることを目指しているというコンセプトに感動し、設計を依頼しました。

真宗大谷派 明勝寺
住職/杉浦明道 様
愛知県豊田市

「良きよすがに恵まれて」感謝申し上げます。

 2011年から始まった豊田市寺部地区区画整理事業に基づき、明勝寺も会館・庫裡等の施設の大幅な改築を余儀なくされました。今回の新たな建設は、会館の代替として、客殿・庫裡の新築、さらには山門、鐘楼の新築、塀や駐車場の整備という寺全体を整備するものとなりました。そして、新施設の建設に当たっては、責任役員と総代の方々で構成する役員会で、仮換地の指定に関わる諸問題の解決やマスタープラン作成ならびに一部の推進を図って参りました。

 マスタープラン(基本計画)の作成に当たって重視したのは、どのような理念で施設の建設を行うのかということでした。その一つは、施設は単なる箱物ではなく本当に必要とされるものであり、「良きよすがの場」を造ることでありました。言い換えれば、心のよりどころとしての「良きよすがの場」の明勝寺をめざして建設を進めることにありました。もう一つは、この寺の主体者はご門徒(檀家の皆様)であることを意識して計画・実行するということでした。この世の中は必ず変化します。将来のご門徒になる方(孫以降)の意識の変化にも対応し、佇まいなどの無形のものを含めた機能を突き詰め、経済的に過分なご負担をご門徒にお願いしなくても良いような計画作りに苦慮いたしました。

 このように今回の建設計画は敷地全体の計画作成となることで、かなり大がかりな設計が必要とされるものでした。そのため、市内外の業者を検討した結果、その課題に対応できる実績経験を持っている菅野企画設計にマスタープラン作成を依頼することとしました。所長である菅野良司氏が、ぶれずに持ち続けてきたテーマは、「伝統を生かした老若男女が集う寺院の設計」でした。その「伝統」はただ形を守るだけでは継承されていきません。次の世代に引き継いでいく伽藍を造ることをめざしていますというコンセプトに感動したからです。

 その後、何度となく私たちの願いを受け止めてくださり、マスタープランが完成いたしました。しかしながら、今回の建設工事は土地区画整理事業と平行して行われるため、一期工事の山門・鐘楼・塀・南側駐車場の新築工事、二期工事の客殿・庫裡新築工事を分けて行わざるをえませんでした。そのため、一期工事の着工から二期工事の竣工まで約4年間かかり、2020年11月にすべての工事が終了しました。

 新しくできました南側駐車場から左手に檜造りの鐘楼を見ながら進んでいきますと、山門の前に至ります。新しい山門は、本瓦葺きの屋根で、総檜造りの薬医門です。ご門徒の皆様が山門を通って、新しく石を敷き詰めた参道を進み、本堂へお参りされる姿を見ますと、当たり前のことかと思いますが、喜びを感じます。
 参道を進む途中から右に折れますと、新しい客殿・庫裡の唐破風屋根の玄関に至ります。そして、中に入りますと、広いホールがあり、その右手にはどなたでも気軽にお茶を飲んでいただくことのできる開放感のある小さな茶室があります。また、左手にはお斎場があります。お斎とは、その源流はお釈迦様の教団にあったと言われています。仏事に参加した人たちがいっしょにする食事のことです。だから、お斎そのものが大切な仏事の一部であります。さらに、正面には応接室、その奥にはお斎を作っていただく厨房があります。その前には、ご門徒の皆様のお骨を預かる預骨堂があります。

 私たちの願いであった「良きよすがの場」は完成しました。しかしながら、この完成しました伽藍が「良きよすがの場」としての明勝寺となり続けるかは、私たち住職と門徒の責任であります。

 菅野企画設計所長の菅野良司氏に初めて明勝寺まで来ていただいたのが、2014年8月でした。それから6年余、菅野良司氏にはたいへんお世話になりました。言葉では言い尽くせないほどの感謝の気持ちで一杯です。また、直接の担当と工事監理をしてくださった前嶋英孝氏にもたいへんお世話になりました。ほんとうにありがとうございました。さらには、一期工事と二期工事の施工を受けてくださった中島工務店の皆様にも感謝申し上げます。木の良さを活かし、飛騨の匠の技術によって、すばらしい山門・鐘楼、客殿・庫裡が完成いたしました。ほんとうにありがとうございました。

 最後に、「世のなか安穏なれ 仏法ひろまれ」(親鸞聖人の手紙から)と平和の祈りが響き続けんことを願います。


 

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